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古楽器

 歴史において盛んに用いられた時期があり、近年まで長らく忘れられていた楽器を、古楽器と言う。近年と言っても、チェンバロなどは再評価が始まってから一世紀くらい経っているし、そのあたりの定義ははっきりしない。ほとんど同じ意味で用いられる言葉にピリオド楽器やオリジナル楽器があるが、これは厳密には、特定の時代の様式で作られた楽器という程度の意味である。たとえば、ピアノは古楽器とは言わないが、「ベートーヴェンの時代のピアノ」はピリオド楽器と呼ばれたりする。そして古楽器ピリオド楽器をまとめた概念として、歴史的楽器という便利な言葉がある。なお、三味線や尺八、伝統芸能で用いられる楽器などは、世間から忘れられてしまった感があったとしても、現代まで使用が途絶えていたわけではないので、古楽器とは言わない。

 西洋音楽古楽器として有名なものには、チェンバロ、リコーダー、ヴィオラ・ダ・ガンバなどのほか、バロック・ヴァイオリン、バロック・トランペット、バロックオーボエなどのバロック期の様式の楽器がある。現代の楽器は高度な工業技術によって、ヴァイオリンでもフルートでもトランペットでも同じように、どんな音でも基本的には同じサウンドで演奏することができるように作られているが、古楽器は全体的に、調によって響きが変わったり、得意技と不得意技がはっきりしていたりと、良くも悪くも強い個性を持っている。

 古楽復興運動が興った20世紀には「作曲家が想定した楽器・奏法を再現するべき」という人々と「現代の聴衆には現代の楽器による演奏を届けるべき」という人々の間で論争もあったが、現在では多様な選択肢が認められている。たとえば日本の地方プロ・オーケストラである山形交響楽団では、表現の幅を広げる取組みとして、部分的に古楽器や古い奏法(ノン・ヴィヴラートなど)によるアプローチを採用している。多様性の時代である。また今回はバロック音楽の動画しか取り上げないが、僕は18世紀オーケストラによるベートーヴェンの演奏が好きだ。

 

ヘンデル:水上の音楽 第二組曲より序曲 (3:55-)

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 バロック期のトランペットには、現代のように音を変えるためのバルブ(キーによって操作するピストンやロータリー)が付いておらず、専ら唇の操作によって音を作っていた。バルブがなく管を曲げただけのトランペットを、ナチュラル・トランペットと言う。その演奏がどれだけ難しく大変なものか、金管楽器を演奏したことのある人なら想像できるだろう。動画で用いられている楽器は、音の微調整のために(これによってドレミが吹けるわけではない)管に穴をあけている。これをバロック・トランペットと言って、ナチュラル・トランペットと区別することもある。

 バロック期のトランペットの音は、現代のトランペットに比べるとゴテゴテしていて図太く、メロディをなめらかに演奏することには向かないが、太鼓のように力強く威厳のある響きを持っている。そのため軍楽隊やオーケストラにおいてティンパニとセットで用いられることが多く、この習慣は伝統としてベートーヴェン交響曲などにも残っている。

 

テレマン:リコーダーと通奏低音のためのソナタ

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 現代日本において教育用の楽器とされているリコーダーだが、バロック期においてはヴァイオリンに並ぶ花形楽器であった。

 伴奏を担当するチェンバロの楽譜には、ベースラインと、コードネームのような簡単な数字(記号)だけが記されており、奏者は左手でベースラインを弾きつつ、即興で右手のハーモニーを添える。これを通奏低音と言う。チェンバロはピアノのように音の大きさを変えられないので、音の数(ドミソ~と弾くか、ドミソドミソ~と弾くか)や、和音の分散(豪華なところではジャーンといっぺんに、繊細なところではド~ミ~ソ~と分けて和音を鳴らす)によってニュアンスをつけていく。その他にも、合いの手を入れたり、ソロのメロディと対になるメロディを加えたりして、いかに気の利いた伴奏をできるかがチェンバロ奏者の腕の見せ所となる。

 

バッハ:無伴奏チェロ組曲 第六番

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 ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ(肩のチェロ、の意)という小型のチェロ。めっちゃ肩こりそう。