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草枕

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 二週に一度以上書くつもりだったのが遂に一日過ぎてしまった。気にしないでいこう。

 さて、かのグレン・グールドも愛読していたという、夏目漱石の『草枕』はいい小説です。

 これといった筋は無く、主人公の長い一人語りと登場人物たちの会話が終始つらつらと続く。始めから終いまで通して読むだけでなく、適当に「開いたところをいい加減に読む」などして、気軽な楽しみ方ができる作品である。

 僕の好きな一節を引用してみる。主人公と那美さんの会話が機知に富んでいて面白いのだけど長くなるので、主人公の一人語りから。

 こうやって、煦々くくたる春日しゅんじつ背中せなかをあぶって、椽側えんがわ花の影と共に寝ころんでいるのが、天下の至楽しらくである。考えれば外道げどうちる。動くと危ない。出来るならば鼻から呼吸いきもしたくない。畳から根の生えた植物のようにじっとして二週間ばかり暮して見たい。

 要するに「日向ぼっこ気持ちいい。動くのも考えるのも面倒くさい」ということだと思うのだが、この日本語のカッコよさはなんだ。ニート高等遊民と言った時代の品格がここにある。

 

 夏目漱石の小説は、教科書にも載っている『こころ』『坊ちゃん』と『吾輩は猫である』『草枕』だけ読んだことがある。『こころ』は後期の作品だからか言葉遣いもあまり古くないし、心理描写が中心なので、あまり頭を使わなくても面白く読める。一方『吾輩は~』をはじめ前期の作品は言葉も古く、この時代特有の、注釈を読まなければ分からないような描写も多いので、読むのに頭を使う。

 そういう時は21世紀を生きる者の特権として多様なメディアの力を借りることができる。ここで『草枕』をラクに楽しむことのできる媒体を二つ紹介しよう。

 まずは上に載せた朗読。YouTubeでは色んな人が朗読の動画を上げているが、この日高さんという方の草枕がとても良い。落ち着いた声音で、声優みたいに声を作っている気配はないのに、朗読者の存在を忘れさせ小説の情景を想起させるような、不思議な臨場感がある。

 もう一つは小学館文庫から発売されている『草枕』。蔓延する難解な漢字に一つ一つルビがふってあり、また注釈が本の終りではなく注釈すべき箇所のページの下に書いてある、大変に親切な商品である。そこに表紙・カスヤナガト、解説・夏川草介という売れっ子コンビの力が添えられている。

 文豪の作品だからといって無暗に意気込む必要はないだろう。主人公も「ラクなことほど有難い」みたいなことを言っている。

 十七字は詩形としてもっとも軽便であるから、顔を洗う時にも、かわやのぼった時にも、電車に乗った時にも、容易に出来る。十七字が容易に出来ると云う意味は安直あんちょくに詩人になれると云う意味であって、詩人になると云うのは一種のさとりであるから軽便だと云って侮蔑ぶべつする必要はない。軽便であればあるほど功徳くどくになるからかえって尊重すべきものと思う。

青空文庫から引用)